技術コラム【吐出の羅針学】接触面の潤滑と潤滑剤の効果
機械要素間の接触面の潤滑は、機械の性能や寿命にとって非常に重要ですが、潤滑については、キャプテンの周りの機械設計者にも知っているようで知らない人が少なくありません。そこで、今回は接触面の潤滑と潤滑剤の効果について話をしたいと思います。
潤滑の三態
物体が他の物体の表面を運動するとき、接触面に受ける抵抗を『摩擦』と言います。潤滑状態はその摩擦形態から、次の三つに分けられます。
1.固体潤滑
接触している二つの摩擦面の間に潤滑剤がなく、完全に乾燥した固体と固体の摩擦をいいます。一般的に摩擦係数は0.3程度です。
2.流体潤滑
接触している二つの摩擦面に、表面粗さに比べて十分に厚い潤滑剤の膜が形成され、摩擦面間を完全に分離している摩擦をいいます。摩擦係数は流体の粘性抵抗で決まり、一般的には0.01程度です。
3.境界潤滑
接触している二つの摩擦面が極めて薄い潤滑剤の膜で分離されていて、部分的に固体の接触が生じている摩擦をいいます。摩擦の大きさは1.固体潤滑と2.流体潤滑の中間となり、摩擦係数は0.1前後です。境界潤滑は、潤滑剤の粘度や量の不足によって発生します。
境界潤滑や特に固体潤滑では摩擦係数が大きく、摩耗が早いだけでなく摩擦損失(発熱量)も大きくなります。高温になると焼き付きなどが生じ、機器の破損に繋がる恐れがあります。
では、どのような条件が潤滑状態を決定するのでしょうか。それを示す有名なものにストライベック曲線があります。
ストライベック曲線
摩擦係数(μ)が接触面間に作用する荷重(W)や接触面の相対速度(V)、潤滑剤の粘度(η)によってどのように変化するかを示す曲線をストライベック曲線といいます。一般的なストライベック曲線は右図のように描かれ、これにより、次のことがわかります。
1.荷重(W)
荷重が大きいと流体潤滑になりにくい。
2.速度(V)
速度が速いと流体潤滑になりやすい。ただし速すぎると摩擦係数が増大する。
3.粘度(η)
粘度が高いと流体潤滑になりやすい。ただし高すぎると摩擦係数が増大する。
混合潤滑とは、接触面において境界潤滑と流体潤滑の両方が生じている状態のことをいいます。流体潤滑において、粘度×速度/荷重の値が大きくなるほど摩擦係数が増加するのは、粘度や速度が高く・速くなるほど、流体と固体接触面の抵抗(摩擦力)が大きくなるためです。粘度が高い方が流体潤滑になりやすいとはいっても、あまり高すぎると摩擦が大きくなってしまうので、潤滑剤の選定時には注意が必要です。
以上のことを踏まえると、潤滑剤の効果がわかりやすくなります。
潤滑剤の主な効果
1.摩擦抵抗の減少
摩擦係数を小さくし、接触面の運動を円滑にします。
2.摩耗防止
摩擦面の摩耗を防止します。
3.冷却効果
摩擦面で発生した熱を冷却し、焼き付きを防止します。
4.洗浄効果
摩擦面での汚れなどを洗浄し、機器を清浄に保ちます。
5.錆止め効果
金属摩擦面での錆の発生を防止します。
6.振動、騒音の防止
振動、騒音を和らげることができます。