技術コラム【吐出の羅針学】流路と圧力損失の関係
以前のコラム「吐出における粘性の影響」でもお話ししましたが、塗布や充填を考えるにあたって圧力損失の計算は非常に重要です。では「圧力損失」とは何なのでしょうか。今回は「圧力損失」についてお話ししながら「流路と圧力損失の関係」を説明したいと思います。
圧力損失とは
流体が配管などを通過する際に失うエネルギー量のことです。エネルギーの単位はJ(ジュール)で表され、単位体積1m3あたりのエネルギーは、J/m3=N・m/m3=N/m2=Pa となり、圧力=単位体積あたりのエネルギーとなります。よって、圧力損失とは、エネルギー損失ということになります。
流路内で失うエネルギーは主に、「壁面での摩擦損失」と「乱れ(渦や乱流)」に分けられます。
壁面での摩擦損失
流体も流路壁面に対して運動していますので、摩擦が発生し、この摩擦力によりエネルギーの損失が生じます。流体の場合、摩擦力は単位体積あたりの摩擦力(正確にはせん断力)、
で表されます(上式をニュートンの粘性法則といいます)。
上式でμは粘度、du/drは流路壁面での流体の速度勾配を差します。つまり、
・粘度が大きい
・流速が大きい
ほど、摩擦力(圧力損失)が大きいということになります。
円管の場合、摩擦圧力損失[ΔP]は、
で表され、さらに層流(流体が規則正しく流れている)の状態だと、
λ:管摩擦係数、l:配管長さ、d:配管直径、ρ:流体密度、u:平均流速、Re:レイノルズ数となります。詳しくは、移送の学び舎 流体って何?(流体と配管抵抗)をご覧ください。
乱れ(渦や乱流)
壁面での摩擦損失の他に流路内で失うエネルギーとして「乱れ(渦や乱流)」があります。これは大きく2つに分けられます。
A)渦
断面が急変したり、管が曲がったりする場合、渦が発生します。この渦は主の流れとは関係がなく、グルグル回るだけなので、エネルギーの損失が生じます。
B)乱流
層流がまっすぐ流れるのに対し、乱流は前には流れているもののミクロ的にみると各流体微粒子が前後左右に好き勝手に流れている状態をいいます。層流と比べ、エネルギーを失うことになります。
この乱流が発生するかどうかを示す指標がレイノルズ数です。
円管以外の流路の場合
円管以外の断面の流路でも①~④式は成立します。①式は単位面積あたりに働く摩擦力なので、同じ流路断面積であれば流路壁の長さが長いほど、全体として働く摩擦力は大きくなり、圧力損失は大きくなるということになります。
但し、m=A/s、A:流路断面積、s:ぬれぶち長さ(流路断面で流体に接している壁面の総長さ)、として、直径dの代わりに4mを用いて求めます。
※ぬれぶち長さとは、例えば右図のような二重管の場合、水色の部分が流路とすると、赤線の長さの和をいいます。
このとき、
で表すことができます。