技術コラム【吐出の羅針学】圧力センサー
圧力計は、ご存じのとおり気体や液体の圧力の状態を表示するものです。一方、圧力センサーは圧力を電気信号に変えるもので、圧力伝送器、圧力変換器とも呼ばれています。今回はこの圧力センサーについてご紹介しましょう。
ゲージ式圧力センサーの構造
圧力センサーにもいろいろな種類がありますが、代表的なのはゲージ式圧力センサーです。ゲージ式圧力センサーは、さらにひずみゲージ式、金属ゲージ式、半導体ゲージ式に分かれます。いずれもダイヤフラムの表面に4個のゲージ抵抗が配置されており、圧力によってゲージ抵抗の抵抗値が変化するので、それを利用して圧力を測定します。測定した圧力の表示方法には、絶対真空を基準にした「絶対圧」と大気圧を基準にした「ゲージ圧」がありますが、一般的に圧力センサーはゲージ圧を測定します。
1.ひずみゲージ式
ダイヤフラムの裏側にひずみゲージ抵抗が貼られています。
2.金属ゲージ式
ダイヤフラムの裏側に絶縁膜と金属ゲージ薄膜が形成されています。ひずみゲージ式に比べ高感度です。また、半導体ゲージ式と比べて温度係数が小さいという特長があります。
3.半導体ゲージ式
半導体をダイヤフラム(センサーチップ)として、その表面にゲージ抵抗が形成されています。金属ゲージ式に比べ感度が高いため、厚いダイヤフラムでの製作が可能となり、耐圧性が向上します。正式には、半導体ピエゾ抵抗式と呼ばれています。
4.半導体隔膜式
半導体ゲージ式圧力センサーの表面を金属のダイヤフラムで覆った構造です。表面のダイヤフラムと裏側のセンサーチップとの間にシリコーンオイルが封入されています。半導体(シリコン)よりも耐食性の高い金属を表面にすることができます。
ゲージ式圧力センサーの測定原理
ひずみゲージ式圧力センサーの断面は、下図のようになっています。
4個のひずみゲージ抵抗R1、R2、R3、R4が、下図のようにブリッジ状につながっています。ここにセンサーケーブルから定電流I [A]が流れると、ゲージ抵抗の抵抗値に応じた電圧Vo [V]が出力します。
ここで、出力電圧Vo[V]は各ゲージ抵抗の抵抗値がr1[Ω]、r2[Ω]、r3[Ω]、r4[Ω]、のとき次の式で算出されます。
圧力センサーの選び方
圧力センサーを選ぶときは次のような点に注意します。
1.定格容量、許容過負荷
定格容量は、測定箇所にかかる圧力の最大値の1/2程度となるように選びます。また、許容過負荷を考慮することも重要です。許容過負荷は「定格容量の何倍の圧力までなら故障しないか」を表すもので、発生する圧力が許容過負荷を超えないようにしなければなりません。
2.定格出力
定格出力は、電圧を1Vかけた時の出力電圧(単位mV/V)で表されます。(ゲージ式圧力センサーの場合)この値は圧力センサーごとに決まっており、自由に選択できません。しかし、増幅器が内蔵されている圧力センサーであれば、電源電圧と出力を選べるものがあります。この場合、計装信号(4-20mA)のものを選ぶとノイズによる誤動作が少なく、出力信号の断線検出もできます。
3.接液面の材質
接触する液によって、腐食しないような材質を選びます。受圧部の材質にはSUS630、SUS316Lなどがあります。
4.接液面の形状
一般的には接液面が凹形状になっています。しかし液体の粘度が高いと、凹部に溜まって固化してしまい圧力が正しく検出できなくなる場合があります。また、空気が溜まって液体に影響を及ぼすこともあります。そのような時は、受圧面が平らな圧力センサーを選びます。この形状はフラッシュ型、またはフラッシュダイアフラム型と呼ばれています。
5.取り付けねじ
一般的なものは、受圧部周囲にねじが加工されていて、圧力センサーをねじ込んで取り付けるようになっています。この取り付けねじは、平行ねじ(表記G)とテーパねじ(表記R)があり、例えばR3/8とG3/8が選べるようになっている機種もあります。ねじ穴と取り付けねじの種類が違っていると液漏れを起こしたりしますので、注意が必要です。
ゲージ式以外の圧力センサー
ゲージ式以外の圧力センサーもあります
1.静電容量型
圧力がかかると、電極に挟まれたダイヤフラムが移動し、圧力の大きさに応じて静電量が変化します。
2.光ファイバー型
圧力がかかると、光ファイバー先端の回折格子が変形し、反射する光の波長が圧力に応じて変化します。
3.振動式
圧力に応じてダイヤフラム表面の振動子の状態が変化し、それに伴い出力電圧と周波数が変化します。
4.空気式
圧力を受ける1次側のベローズが伸縮し、2次側の体積(空気圧)が変化します。